山ちゃんの東ベルリンでの1日


(ライヴィッチはウツボ顔?狼顔?)
 山ちゃんは西ベルリンで、東ベルリンへ入るための簡単な一日観光ビザを取得してから、地下鉄で東ベルリンへ入った。本来はそこで東ドイツマルクという通貨に交換するのだが、山ちゃんは西ドイツで既に東ドイツマルクに交換して石鹸の中に隠して持ち込んでいたので交換の必要はなかった。だが小心者の山ちゃんは全く両替をしないと違法である通貨持ち込みを疑われてはいけないので10マルクだけ(約800円)交換した。前に書いたが、10西ドイツマルクは東ドイツで交換すると10東ドイツマルクにしかならないが、西ドイツで交換すると50東ドイツマルクになる。
 まず東ベルリンの街を散策することにした山ちゃんは、目の前の風景に驚いた。30年も昔の風景を見ているようだったからだ。まず街全体がとても古い感じで建物が燻されているようだった。往来する車は明らかに年代物の小さなもので、人々は古着をまとっているようだった。何もかもがアンティック調に映った。
物価も驚くほど安かった。街角で買ったアイスクリームがたったの20円程度(実際はその20%)だった。だがスーパーに行ってみると別の意味でびっくりした。物が無いのだ。精肉のショーケースにはほとんど肉が無く、ハムのような燻製肉が少し並んでいるだけだった。パン屋さんも2種類くらいのパンが並んでいるだけだった。
 山ちゃんは本来の目的であった楽譜店に入った。嫌な予感が当たった。やはり楽譜の種類が少なかった。西ベルリンの楽器店と比べる気にもならない位何もなかった。しかし面白いのは、ある楽譜だと30冊以上も並んでいるのだ。例えばベートーヴェンピアノソナタ全集全3巻の1,2巻がずらっと並んでいた。しかも布張りの上質な装丁本だ。しかも西で買うと60マルクは(約5000円)は下らない。それが12マルクで売られていた。(しつこいが実際はその
20%)当然山ちゃんはその1,2巻を購入し、あとはたくさん余ってしまった東ドイツマルクを使いきるために、積極的に欲しくもない楽譜をたくさんお殿様買い?して西ベルリンへ戻ってからデトモルトへ帰ったのだった。