山ちゃん、鬼瓦アヒレス先生にフルートを習う。


(鬼瓦ってこんな顔〜?)
 デトモルトに戻って来た山ちゃんはまず練習できる部屋をさがした。それは大変な事ではなかったよだ。何故ならデトモルトには当時日本人学生が50人位いたのだ。みんな親切なのですぐに部屋も見つかるし、先生ともコンタクトもとれるっていう訳だ。
 何故デトモルトはそんなに日本人が多いかと言うと
昔は名門音楽大学だったからだ。なんたってブラームスも過ごした位文化的な町に音楽大学があったのだ。日本で有名な演奏家だと、チェンバロ小林道夫さんやオーボエの宮本文明なども卒業生だ。確かに今山ちゃんの知り合いである辻さんはこの頃から大変親しくしてもらったらしい。辻さんは現在読売日本交響楽団オーボエを吹いている。そうそうNHK交響楽団ファゴットを吹いている水谷さんも知っていると言っていた。山ちゃんはそんな音大の先生に習おうとしていたのだ。しかもだ、失礼にも勝手に「鬼瓦アヒレス」と言っていたそうだ。
 鬼瓦アヒレス先生はその怖い顔と反対にとても優しく親切だった。しかも先生のフルートの音は美しくその音楽の表現は素晴らしく、山ちゃんは絶対にアヒレス先生に習いたいと思った。しかし依然として、アヒレス先生はいい返事をくれなかった。(だから言ってるじゃない、お前はヘタだったんだ!っと=ルナピンスキー談)
 そんな時山ちゃんは大変な事を知った。留学をするためには試験を受けなければならないのだが、みんなは入試ビザを日本で取ってくるのだ。そうすれば合格と同時に学生ビザに切り替えられる。だが山ちゃんの場合、志望大学が決まらなかったので観光ビザしか取れなかった。だったら、もし合格しても一度ビザを取りに日本へ帰らなくてはならなかった。山ちゃんは一度日本へ帰る決心をし、入験受験証明書を手に帰国したのだ。日本では「山田が強制送還されたらしい!」との噂が広まった。