ルナピンスキー、山田家の普通ではない夜に翻弄される。


その晩もいつものように山ちゃんの息子のフーガ君が「おやすみ」と言って2階へ上がっていった。その彼をライヴィッチがいつものように騒々しく吠えたてながら見送った。やがて奥様もすぐに「おやすみ」と言い残して出ていった。
 さあ、これからが山ちゃんワールドだ。と言っても
あいつのやる事だ。たいした事ではない。山ちゃん、さっそくソファーで横になってビールを飲みながらテレビを見ている。どうやらサッカーらしい。お前寝てるんじゃないか〜?と、上目づかいに見ていると、どうやら寝ているようだ。奥様に言いつけないでいる私に感謝しろ!と思っているうちに今度は、歌の曲が流れてきた。お前〜寝るかテレビを見るかはっきりしろ〜!と、これもいつもの事で夜が明けるまでこんな調子なんだろうなと思ったその時、な、なんとフーガ君が起きてきた。なぜ?まだ暗いぞ。すると今度は奥様まで来た。なんてこった、だらだら寝ていた山ちゃんまでがずっと起きていたように元気にテレビのチャンネルをを変えたではないか。この状況、つまりまだ真っ暗な早朝にフーガ君や奥様が起きている事が奇跡なのだ。だってまだ3時過ぎだぞ・・・。私はどうしたらいいのだ?ライヴィッチはフーガ君にも奥様にもシッポをブンブン振って喜んでいる。さっきまで爆睡していたくせに、本当に節操のない奴だ。私はとっても考えられる賢くて可愛い犬だから、とりあえず寝ているふりをしながら考え、やはり寝ることにした。山田家みんな真っ暗なうちからサッカーを見ている。どうやらワールドカップ「日本対デンマーク戦」らしい。結局日本が3対1で勝って決勝トーナメント進出決定したが、日本が点を取るたびに「お手やタッチ」をさせられて大変だった。しかもあの冷静な奥様が・・である。よほど大層な盛り上がりだったのだろう。ライヴィッチはなんの疑問も持たずノリノリで奥様や山ちゃんにお手やタッチをしていた。まったく馬鹿な奴だ!私は適当にあしらってやった。だいたい山ちゃんは私がグレート・デンだからデンマークを応援すると前に言ってたぞ!ぜったい日本を応援していたよな〜。わかってはいたが、あいつも節操のない奴だ。