日曜日の話

 日曜日に福岡であった『ナタリー・デセイ』のソプラノのコンサートを観に行った。彼女は昔から大ファンだった。福岡であるのだから当然行かないわけはない。ところが1月に事故に遭い歩くこともままならず車椅子生活になった時点でコンサートはキャンセルした。ところがだ。2週間前だっただろうか。大学生の息子が嫁さんとスマホで話している。夜中に僕が帰宅すると嫁さんが「お父さんに直接話しなさい。」と言ってそのスマホを僕に手渡した。話を聞くと大学を落第したという。僕は電話でその人の顔が見えないで話するのは苦手なので息子に『ナタリー・デセイ』のコンサートの後に話をしようと言った。お陰で諦めていたデセイのコンサートを聴くことができた。その後息子と水炊きを食べながら話した。落第の原因はアルバイトか?オーケストラか?と訊いたら単純に学力がなかったという。そう言われたらそうかと納得するしかない。次は絶対大丈夫と彼は言うし大学院は行かないと言うので、我々は食事だけであまり話すことなく分かれた。
デセイのコンサートは本当に素晴らしかった。聴けて良かったと余韻に浸りながら新幹線で帰路に向かった。
 帰宅すると我が家の馬鹿チンが本をバラバラにしていた。僕はそれがゲーテファウストの第一巻だと思って読んだからいいやとそのままにして寝た。次の朝第二巻を読もうと机に置いていた本を手に取るとそれは第一巻だった。では床でバラバラになっているこの本は?・・・『この馬鹿チンが!』と怒ってもいろんな意味でもう遅い。