シリンクス(1)

「シリンクス」はギリシャ神話に出てくる妖精の名前だ。僕達フルート吹きとってはとても有名なかつ重要な存在だ。というのは近代の有名な作曲家ドビュッシーのフルートソロ(伴奏もない)の名曲があるからだ。たった2分程度の曲だがその曲の世界観は僕達をギリシャ神話の世界に導いてくれる。なぜなら「シリンクス」の主役は彼女ではなく「パン」という上半身が人間的で(但し頭には山羊の角が生えている)下半身が山羊というギリシャ神(化け物?)なのだ。彼は妖精たちと遊ぶか昼寝を貪っている毎日を過ごしていた。例えば昼寝している「パン」の近くで人間どもが大声で騒いでいたら彼は怒りだす。そこで人間どもは大騒ぎだ。所謂パニくるのだ。パニックは「パンが騒ぐ」の語源だ。だから現在の日本でもパンはすごい存在感を持って活きている。そのパンが大好きだった美しい妖精が「シリンクス」だった。前出のフルートの名曲は現在「シランクス」と記される事が多いがそれは作曲家のドビュッシーがフランス人だからフランス語読みだろう。時代は曲名も変えてしまうのだ。話は凄く飛ぶが(僕の悪い癖)ドビュッシーピアノ曲「金の魚」も僕の子どもの頃は「金魚」と記されていたし、メシアンの近代フルートの名曲「クロウタドリ」もずっと「黒ツグミ」とプログラムにあった。これは自慢だが、僕の大学の卒業演奏でこの曲をしたのだが、皆が「黒ツグミ」と認識していた時代に僕はあえて「クロウタドリ」とプログラムに記した。まあ、どうでもいい話か。さあ、話が脱線しすぎで蛇足になってしまった。
 牧神パンはシリンクスが大好きでたまらなかったのだ。この話の続きは次回に!