アンナの部屋で(7)


(ルナのかわいいお部屋よ)
「だからストラドが私に言ったじゃない。もしニスの秘密がわかったら、私の為にバッソンを作ってやろうって。」
 アンナとキアーラは声を揃えて言った。
「だから?」
「も〜う、その時のストラドの言葉を覚えてないの?彼は、バッソンの内部にその秘密のニスを塗ると凄くいい音が出ると確信している、って言ってたじゃない。」
「だから?」キアーラが訊いた。
「も〜う、二人は管楽器ではないからわからなくて当然だけど、木管楽器って大変なのよ。木管は湿気ると音が悪くなるの。でも木管楽器って、息を吹きこむ訳でしょう。当然管の中は湿気るなんてもんじゃない。だらだらと水滴が落ちてくるのよ。だから管体が湿気るともうダメなのよね。透き通るような音だったのがモゴモゴとかすれた音になってしまうの。だからなのよ、わかった?」
「だから・・・何が?」今度もキアーラが訊いた。
「だからさあ、ストラドのニスは、湿気どころか水にも強いのよ。だからあ、ストラドはバッソンの中にそのニスを塗るといい音が出るって言ったのよ。つまりアンの見解は正解だったって事よん。」
 キアーラは感心してパオラに訊いた。
「なるほど、それで、湿気に強いニスって一体何?」
 パオラは、
「だからあ、えっと、・・・アン・・・何?」
 パオラは急に気弱になり、アンナを見た。
「そのニスは今はわからないけど見つかりそう、いや見つかったかもしれないの。わかったら必ずお姉さまに言いますから、温かく見守っていて下さいね。」
「はいはい、パオお姉さまは全身温かくして、首を長くして待っていますからね。」
 パオラがおどけて言った。
 その時だった。急に廊下が騒がしくなった。
 キアーラがドアを開けて廊下を覗いてみたら、遠くでアントネッラが叫んでいた。
「大変なの、誰か来て〜!クララが倒れたの。誰か〜助けて〜!」