これが病院伝説だ(2)
横綱級の噂話の後では、他のたわい無い噂は赤子の手をねじるような単純なも
のだが、赤子とてバカにはできない。なんたって泣き出したら止まらない。
『病院内で出された手紙は全て検閲される。』
患者の書いた手紙はナース・ステーションに置かれているお手製段ボールの簡
単なポストに投函するのだが、郵便局員が病院へ回収しに来る前に、患者の手紙
は中を担当の看護師によって全てチェックされているらしい。
『患者たちで組織された自治会は病院側のスパイである。』
そもそも自治会執行部役員は看護部長の承認によって決められる。役員たちは
ある程度の見返りが与えられ、彼らは病院のスパイになっている。
俺が思うに、仮にスパイでなくても誰もが早く退院したいのだから少しでも病
院側に尽力したいヤツはいるし、病院もそんなヤツを上手に使いたいよなあ。よ
うするに魚心に水心だね。それに全患者から、月5000円もの自治会費を病院
が徴収している不満もあるんだろうね。だって自治会費を病院が使っているのだ
からね。何に使っているかって?それはまた今度俺が噂でなく話そう。
『県内のほとんどの病院がこの精神病院と契約している。』
患者を集めるために、県内のほとんどの病院と結託して患者を送り込ませてい
る。その理由をアルコール依存症と診断を下してもらい、送り込ませた医師には
報酬が支払われている。
などなど・・・あとは、『オレはあの看護婦と寝た。』だの、『病室に監視カメ
ラが付いている』だの、『院内の電話は盗聴記録されている。』だの、どうでも
いいような噂には、枚挙にいとまがない。
最後にこの病院でシーラカンスのように長く患者として住んでいるおじいちゃま
が話してくれたドラマのような語りを、俺の脚本で書いてみよう。
*これはフィクションです