これが病院伝説だ(1)
朝の清々しい外の空気を呼吸できる貴重な時間に、耳に入ってくる話が同様に貴
重なものだとは言えないが、開放的な空気の下では口も開放的になるようだ。狭い
社会の中にいると、その平凡な生活にある種の刺激を求めて、とかく噂話が謳歌す
る。これは田舎だからとか、村社会に限られたことではなく、都市の中でも都市伝
説という名の非文明的な噂話が尽きることはなく、これもメディアによって拡散さ
れていく。それが限られた文明の中で極度に閉鎖された空間にいたのなら、それは
もう都市伝説の比ではない。しかも騒げばどのような報復が待っているか判らない
恐怖政治の凝縮された建物の中においては、静かな伝説として伝播していく。これ
から書くことは、俺の好奇心というアンテナが捉えたもっともらしい噂話だ。とは
いうものの、所詮どこにでもあるような噂にすぎない。
『あの看護婦と委員長はデキている。』
このての噂話の不動なる大横綱級のものだ。
ある看護婦は若い頃から委員長の愛人だった。だから一目置かれ誰も彼女には
逆らえないらしい。
『この病院の地下には霊柩車を停める駐車場があるらしい。』
これは病院あるあるの噂話だ。むしろ本当にあるような気がしてくる。
それが精神病院の噂となると少し状況は変わってくる。この病院でも地下の秘
密の駐車場に霊柩車が静かに停められ、そこへ通じる専用のドアから遺体が運
ばれて、誰の目にも留まることなく深夜病院から出て行くそうだ。
*これはフィクションです・・・ですが、まだまだ続く