早朝散歩の光景(2)

 この光景を同室のデブは毎朝3階から見ていた。デブは散歩に行かずに部屋の窓

から外を眺めながら、今日は誰が歩いている、今日は少ないなどと大きな独り言を

吐いていた。その時にはブラックはベッドで横になっており散歩には出ていない。

ブチは部屋にはいなかったが散歩には行かないようだった。

 外に出られるといっても、たったの15分程度だ。そのために外履きの靴を部屋

から用意して2ヶ所のチェックを受け階段を下りたり上がったりしなくてはならな

い。それでも外へ出て散歩したいという思うのか、そうまでして外へ出なくてもい

いと思うのか、その違いに年齢は関係ない。15分間の散歩を終えると、みんなド

アの所へ集合して呼ブザーを押す。「は~い」と応答があってしばらく待っている

と中から看護師がドアを開け顔を出しチェックする。その後は外へ出た時の逆回し

の要領だ。階段を上がり2階の連中と分れ3階の入り口前で再び呼ブザーを押す。

「は~い」と応答があってしばらく待っていると看護師が来る。「おかえりなさ~

 い」と言って名前を確認しながら中へ入れる。散歩の時間が決まっているのだか

ら、いちいち待たさないでドアを開けて待っておけよ、と俺は言いたかった。15

分の早朝散歩は心と身体の健康にいいだけでなく、いろいろな連中と接触できる貴

重な時間でもある。そこで俺はいろいろな話を聞くことになるのだった。

 

   *これはフィクションです